食品ロス削減アドバイザー・冷蔵庫収納家の福田かずみです。
2025年2月21日、神奈川県相模原市にあります株式会社日本フードエコロジーセンターを見学しました。
こちらは、食品ロスの削減と循環型社会を実現する会社で、食品の製造過程で出る副産物や残渣を家畜用の飼料に再生する工程を見ることができました。
実は、2020年8月に公開された映画「もったいないキッチン」のロケ地でもあり、私も野菜を刻むシーンでエキストラとして参加したため、懐かしさを感じながら施設内に入っていきました。
見学者用の通路は2階に設けられており、1階で作業する方の邪魔にならずにすべての工程を見ることができました。
工場内に入ってまず感じたのは、その清潔感でした。想像していた臭いはなく、衛生的に管理されていることが伝わってきました。
そして驚いたのは、運ばれてきた食材が分類されていることでした。その理由は、栄養バランスを考えて配合しているとのこと。どのタイミングでも過不足なくバランスの取れた飼料をつくるためです。
ここには、キャベツの葉が沢山ありますが、野菜だけではなくご飯やパンといった炭水化物も運ばれてきます。ある大手中華料理店からは、定期的に餃子の皮が搬入されるそうです。餃子の皮は、何度ものばして型抜きをする過程でどうしても残ってしまう部分なのだそうです。
成形を繰り返すと食感が損なわれるため、どうしても発生してしまう残渣があるのですね。
「食品ロスは絶対悪なのか?」—— そんな問いを持つようになってしばらく経ちますが、
思考の整理をしながら見学していきました。
さらに進むと、ちょうど缶入りの粉ミルクを開封していました。
J.FECでは、近隣の就労施設と委託契約を結び、障がいのある方々に就労支援の機会を提供しています。
包装されたパンやおにぎりなども定期的に運ばれてくるそうで、パッケージの開封や分別作業を担当しています。
包装された商品は、焼却処分されることが多いと聞きますが、これをリサイクルへとつなげられるのは素晴らしいことです。
こうして食品廃棄物のリサイクル率向上にも貢献しているのですね。
いよいよ原料の投入です。コンテナに入った食材は、高圧洗浄機を使って余すことなく移し替えられていました。おそらく、細かなコツや要領があるのでしょうね。
その後、食材はベルトコンベアーで運ばれ、まずは手作業で異物混入のチェックが行われます。さらに、金属探知機を通し、細かな金属片も見逃さないよう徹底されています。
すべてのチェックを終えると、水分量の多い牛乳やヨーグルトといった良質な原料とともに破砕機にかけられ、水分率70〜80%のお粥状に加工されていきます。
こうして、全ての過程を経て飼料へと生まれ変わる食品廃棄物の量は、1日あたり42万トンにおよびます。工場は24時間体制で稼働し、食材が新鮮なうちに処理される仕組みが整えられています。
ここからは、お粥状になった飼料の品質を保つための工程になります。安全で安定した飼料にするために、どのような処理が施されているのか、詳しく見ていきましょう。
まず、こちらのタンクに移された後、90℃で60分以上攪拌しながら殺菌処理が行われ、大腸菌やサルモネラ菌などの有害菌が除去されます。
その後、冷却し、乳酸菌による発酵を行い、pHを4以下に調整して完成します。乳酸発酵させることで保存性が高まり、常温で2週間の保存が可能になるとのこと。
飼料といえば、ドックフードなど乾燥した状態のものが一般的ですが、水分を飛ばすためには多くのエネルギーが必要でコストがかかります。一方、液体のままでは腐敗しやすい。そこで、大学の先生たちと一緒に研究して生まれたのがこちらのリキッド発酵飼料でした。
こちらが6日前に完成したものです。蓋を開けて、中の様子を見せていただきました。
右の写真を見ると、発酵による気泡を確認することができます。
色はぬか床によく似ているのですが、香りは意外にもマイルドでした。私は、毎日ぬか床を混ぜているので、つい構えてしまいましたが、思っていたより匂わないことに驚きました。
IMG_5698 ←ここをクリックすると動画が見られます。
養豚場では、この飼料が置かれると、豚たちが集まってくるそうです。栄養バランスに優れたご飯ですものね。生育が良く、さらに発酵による腸内環境の改善も期待されているそうです。
また、リキッド状であることで消化効率が向上し、糞尿の排泄が抑えられるのだとか。さらに、アンモニア臭の軽減にもつながるといいます。

「優とん」は、日本フードエコロジーセンターの登録商標です。
J.FECの飼料で育った豚は「優とん(ゆうとん)」と名付けられ、乳酸発酵飼料で育ったブランド豚として流通しています。
通常の豚肉に比べ、健康に有用なオレイン酸の含有率が高く、 コレステロール値が低いヘルシーな豚肉とのこと。食感が柔らかく、脂肪分の融点が低いので舌の上でとろける甘さが味わえるそうです。
興味が湧き、見学帰りに立ち寄ることにしました。
火焰山餃子房塩田店の「優とん餃子」をいただくことができました。もちろん文句なし。とても美味しかったです。
次回はぜひスーパーで購入し、自宅で調理してみたいと思います。まずは、優しく茹でて、少しのお塩でシンプルに味わってみたいです。
【むすびに】
この度の見学を通じて、食品ロスという資源の有効活用を体感することができました。
日本の食料自給率は約38%です。さらに言うと、国産の食肉を生産するために必要なエサはほとんどが外国から輸入した穀物です。本当の意味での国産ではありません。
捨てられてしまう食べものが家畜のエサに循環リサイクルされることが広がれば、日本の食料自給率の向上につながると思います。
また、私たちが食べたいときに食事ができる世の中の裏には、どうしてもロスが発生してしまいます。もちろん発生抑制が第一ではありますが、それでも出てしまう食品ロスはこのように良質な飼料に生まれ変われること。日本フードエコロジーセンターでは、素晴らしい循環が実現していました。
もっともっとこのような食品リサイクルが広がることを願って、レポートを終わりにいたします。

中央:日本フードエコロジーセンターの高橋功一社長右:ごみダイエットアドバイザーの橋本祐子さん
「食品ロスに新たな価値を」
今回の見学を通じて、高橋社長の理念を伺うこともできました。
その取り組みは、飼料化だけにとどまりません。現在、食品廃棄物をメタン発酵させ、バイオガスとして発電に活用する新たな試みも始まっています。これからの展開にも目が離せません!
この度は、貴重なお話をたくさん伺うことができ、誠にありがとうございました。
また、今回の見学の機会をくださった、ごみダイエットアドバイザー・橋本祐子さんにも心から感謝いたします。これからも食品ロス削減の啓発に力を尽くしていきたいと思います。