食品ロスを通して学ぶSDGs講演会 〜 横浜市内中学校での取り組み

食育インスタラクター、食品ロス削減アドバイザーの福田かずみです。

令和7年10月24日、横浜市内の中学校の総合学習にて「SDGsと食品ロス」をテーマにお話ししました。

今回は2回構成のうちの1回目。生徒たちが食品ロスの背景や社会に与える影響を理解し、自分たちで解決策を考え、次回の授業で発表へとつなげていきます。

そのため、私からは食品ロスを減らす解決策は伝えず、背景と影響に焦点を当てた資料づくりにしました。
冒頭では、緊張した空気をやわらげるためにアイスブレイクを用意しました。AIに描いてもらった「おもちゃ付きハンバーガーセット」です。

少し前にこのハンバーガーの食品ロスがニュースになりました。ほとんどの生徒がこの問題を知っていました。

そんなハンバーガーを捨てるということは?

食品ロスが「もったいない」だけではなく、その背景に目を向けることで、食べ物を通して社会や環境、そして私たちの暮らしへのつながりが見えてきます。

講演資料より「食品ロス・5つの視点」

食品ロスを5つの視点で見ていきました。

⒈ バーチャルウォーター
⒉ 食料自給率とフードマイレージ
⒊ ごみ焼却と地球温暖化
⒋ 食品ロスと食の不均等 
⒌ 食品ロスの経済的損失

講演資料より「バーチャルウォーター」

バーチャルウォーターとは「仮想水」とも呼ばれ、食料が生産される過程で使われた水の総量を示す考え方です。

たとえばハンバーガー1個を作るには、牛を育てるための飼料やバンズの原料である小麦を育てるための水などを合わせて約2700リットルが必要とされています。

捨ててしまうということは、それだけの資源を無駄にしてしまうということでもあります。

講演資料より「フードマイレージ」

日本の食料自給率にも注目しました。

日本は多くの食料を海外から輸入しています。ここで紹介したのが「フードマイレージ」という考え方です。

これは、食べものが生産地から食卓に届くまでに運ばれた距離に、輸送量を掛け合わせて算出した数値のこと。

数値が大きいほど、輸送に使う燃料が増え、CO₂の排出量も多くなります。

日本の食料自給率は38%です。逆にいうと、私たちの食事の6割は外国から運んできているため、世界の中でもフードマイレージが高い国と言われています。

続いて、食品ロスを含む生ごみは、水分が多く燃えにくいこと。
ごみ焼却の視点でも見ていきました。食品ロスの原因は3つあります。「食べ残し」「過剰除去」「直接廃棄」です。自治体が定期的に行なっている「食品ロスの実態調査」での様子を見ていきました。

講演資料より「食品ロス実態調査」

食の不均等では、日本における食品ロスは1年間に464万トン発生している一方で、食べものに困っている人は2,000万人いると言われています。※1世界でも約8億人が飢餓に苦しんでいる一方で、年間約13億トンもの食べ物が捨てられています。食べ物は十分にあるのに、経済的な格差や物流・社会の仕組みが整わないことで必要な人に届かないこと。

そして、講話の最後には、食品ロスが経済に与える影響についても取り上げました。

日本で発生する約464万トンの食品ロスをお金に換算すると、なんと約4兆円。この金額は、文部科学省や子ども家庭庁といった国の主要な省庁の年間予算にも匹敵するほどの規模です。

また、食品ロスを含むごみ処理全体にかかる費用も2.2兆円にのぼります。もし、食品ロスを減らすことができたなら、その分を教育や福祉に役立てたることができるのではないかと。家庭からの食品ロスも同じことが言えます。家庭から出る食品ロスをお金に換算すると、1世帯(4人家族)あたり年間およそ72,000円にもなります。「食品ロスをへらしたら、お小遣いが増えるかも?^^」最後に生徒たちに問いかけてみました。

終わりに、「SDGsのウエディングケーキモデル」を紹介しました。

講演資料「SDGsのウェディングケーキモデル」

 

この図は、SDGsに解決すべき優先順位があることを表しています。
No.17「パートナーシップで目標を達成させよう」を頂点に、「経済圏」「社会圏」「生物圏」の三つの階層に分かれていて、「経済」の発展は、生活や教育などの社会条件が整うことで成り立ち、「社会」は最下層の「生物圏」、つまりは私たちが生活するために必要な森の恵みや海の恵みなど「自然環境」によって支えられていること。
「生物圏」は、全ての目標の土台となっていて、「水」や「海」、「森林」など私たちが地球上で暮らす上で必要不可欠な“環境問題”や、“気候変動”についての目標になっています。これらがまず優先すべき目標であることを表しています。

今回の「つくる責任・つかう責任」の中に『2030年までに世界の食料廃棄を半減させる』ことを掲げています。これは、SDGsの土台となるNo.13「気候変動に具体的な対策を」にコミットしていることを確認して締めくくりました。

食品ロスの背景と社会に与える影響について約40分間お話しいたしました。次回は年明けに。生徒たちが考えた解決策を聞かせてくれることを楽しみにしています。

厚生労働省が2019年に行った「国民生活基礎調査」より
相対的貧困の基準は世帯年収127万円とされ、相対的貧困率は15.4%に達します。 これは日本人口の6人に1人、約2000万人が貧困生活を送っていることになります。

 

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